MICEトレンド, 戦略

2020年5月12日

ソフトバンク 20年3月期オンライン決算説明会。SDGs、3ブランド、PayPay等の戦略を語る

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「日本中が外出を自粛している中、通信事業者としての責任は何か」。

5月11日、オンラインで開催されたソフトバンクの2020年3月期 決算説明会で、ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮内謙氏がこう語りかけた。「東日本大震災の時もそうだったが、通信は、人と人をつなぐライフライン、ということを再認識した」。その上で、ソフトバンクとして何ができるかを考え実行してきたという。

具体的な取り組み例として、横浜に停泊したクルーズ船にはiPhone2000台、法人にはテレワークができる環境、学生、子供たちには遠隔教育ツールを提供した。学生には通信料の支払いを遅らせることもした。通信が生活に欠かせない社会インフラとなった今、宮内氏は「社会基盤を支え続ける事こそが通信事業者の使命である」と力強く語った。

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SDGs経営に向けた6つの重要課題

 

宮内氏はSDGs(注1)について半年前から検討し、今後、本格展開していくとした。17ある持続可能な開発目標を、「ソフトバンクとしてできることを、一つずつ実施していきたい」と語った。

もともとソフトバンクは創業以来、一貫して情報革命を通じた社会貢献を追求してきた。そして、「今、まさに過去最大のパラダイムシフトが起ころうとしている」とし、5Gによる通信技術の革新デジタルトランスフォーメーション(DX)働き方の転換気候変動の4つをその要因として挙げた。これを前提にソフトバンクは、6つの重要課題を特定しSDGs達成に向け実行していく。

まず1つ目は、デジタルトランスフォーメーション(DX)による社会・産業の構築だ。宮内氏は、「最先端のテクノロジーを使って産業基盤を拡充、効率化する。あるいは地域社会の活性化につなげる。新しい産業そのものの創出を起こす」と話す。これはSDGsにおける“8 働きがいも経済成長も”、”9 産業と技術革新の基盤をつくろう”、“11 住み続けられるまちづくりを”に合致する。

2つ目は、人・情報をつなぎ新しい感動を創出する。「創出価値としてはスマートデバイスを通じて魅力的な価値を実現する」「ICTで新たな生活スタイルを生み出す」であり、中長期の目標として設定した。

3つ目が、オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出。「新しいテクノロジーを使うことによって、新しいビジネスモデルを生み出せる」「新たな人材を獲得できる」とした。

4つ目は、テクノロジーのチカラで地球環境への貢献だ。昨今、地球温暖化対策は多くの経営者の関心事になっている。「最先端テクノロジーを使って気候変動への対応、あるいは循環型社会の推進および自然エネルギーの普及で大きな貢献をしていきたい」(宮内氏)。

5つ目は、ソフトバンクの本業である質の高い社会ネットワークの構築。ここでは防災や減災に貢献する盤石な通信インフラや、データセキュリティ、プライバシー保護の取り組みで社会に貢献していくとする。

最後が、レジリエント(回復力がある)な経営基盤の発展。宮内氏は、「コーポレートガバナンスを高度化し実効性を高めていく。特にステークホルダーとの対話を通じた持続的な発展、社会幸福度向上のためのダイバーシティ等も含めて、レジリエンな経営基盤を推進していく」とした。

以上をまとめると成長戦略と構造改革の両方を図っていき、「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中をつくっていく」とした。

注1)SDGs:持続可能な開発目標。2015年9月に国連総会で採択され、以降、政府や自治体、企業等でさまざまな取り組みが行われている。

 

ソフトバンク・ワイモバイル、LINEモバイルのマルチブランド戦略

 

2020年3月期の決算では、売上高が前年比4.4%増の4兆8,612億円、営業利益は同11.4%増の9,117億円、当期利益は4,731億円。当期純利益は、4,731億円を達成した(前年比2%増)。「セグメント別でも通信(コンシューマ、法人)、ヤフー、流通、その他部門、すべてにおいて増益となった」(宮内氏)。

それぞれの状況を見ていく。

まず通信のコンシューマ事業。売上高は前年比4%増の2兆6,967億円で、通信サービスが順調に成長した。2019年度は、ソフトバンク、ワイモバイル、LINEモバイルの3ブランドのマルチブランド戦略を実行、さらにヤフーとPaypayとの連携強化、通信品質の維持・向上に取り組んだ。

ソフトバンクブランドは、3月中旬に大容量プランであるメリハリプランを発表。「対象の動画・SNSが使い放題かつデータ容量も50GBだが、月間のデータ利用量が2GB以下の場合、自動的に月額料金が1500円割引になる」「自分のライフプランにあわせてデータが使えるようになる」というものだ。同サービス利用者の満足度は91%と非常に高い結果が得られているという。

ワイモバイルブランドは、端末分離を行いシンプルな料金プランへと強化した。さらに販売促進としてソフトバンクブランドとのデュアルショップを全国で展開。店舗数は2年前に比べて1.5倍の1800店になった。

LINEモバイルブランドは、利用者の料金満足度(93%)が高く、ソフトバンクにグループ入りした2018年以前と比べて2倍強で回線数を増やしている。「データは少量だが、SNS利用に特化するユーザーにミートした結果だ」と分析した。

ヤフーとPaypayとの連携は、モバイル契約時にPaypayボーナスライトの付与やソフトバンクユーザーがPaypayモールでショッピングすると最大20%戻ってくるというキャンペーンを行なうことで顧客数が増えているという。

これらの施策の結果、昨年度205万件のスマートフォンの契約数を獲得できた。

そして、これからは5Gの時代へと突入する。宮内氏は、ソフトバンクの5Gの強みとして、「既存基地局(23万箇所)の活用」「Massive MIMO(4G時代から展開)」「KDDI との連携」を挙げた。KDDIとは、5Gの地方展開を加速し、2021年度末には人口カバー率90%超、超低遅延、多数同時接続に対応していく。これらにより、自動運転や遠隔手術、無人倉庫等が実現できるとした。

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デジタルトランスフォーメーションがいよいよ本格化

法人事業は、売上高が3%伸び6,389億円だった。特に、クラウド、IoT、セキュリティ、デジタルマーケティング等のソリューション部門が17%増と成長した。

クラウドはG Suite、Office 265、ASPIRE等のマルチクラウド戦略を実行。IoTは2倍以上伸び、「IoTは多種多様なニーズがある。主な例を挙げると電車の中の防犯カメラ、LPガスの残量を遠隔でチェックといったサービスが引き合いが強い」とした。また、これらが成長すると「セキュリティも重要になる」。セキュリティソリューションのcybereasonは、売上高前年比167%で成長した。デジタルマーケティングも26%増。

宮内氏は、「これらは今まさに始まったばかり。スタートダッシュのフェーズでこれから法人事業は一気に加速していく」と強調した。

また足元の状況として、「昨今の新型コロナの影響で企業のデジタル化需要が急拡大している」と指摘した。2月と3月で比較すると、インターネットVPNアクセスは6倍、ウェブ会議ZOOMは10倍、音声通話UniTalkも2倍に増加している。デジタルトランスメーションによって、企業や社会が抱えるさまざまな問題を解決できるとした。

 

他社が真似できない未来を創る

 

ヤフー事業は、売上高が前年比10%増の1兆円を突破した(1兆529億円)。PayPayサービス、ZOZO買収、ヤマトホールディングスとの連携、X(クロス)ショッピング構想といったダイナミックな経営判断を次々と実行し、その成果が出た。

ヤフーのEC部門は、14%増加し、メディア部門ではソフトバンクの法人営業部門が新規顧客を次々と獲得。下期の広告売上だけで約44億円を獲得した。宮内氏は、「ソフトバンク、ヤフー、LINEで他社には真似できない未来を創っていく」と語った。

その他の事業としては流通事業も順調に拡大。決済代行のSBペイメントサービスも営業利益は60%拡大した。結果、営業利益は9,117億円、11%増益を実現できた。

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スーパーアプリを目指すPaypay、オフィス改革でWeWorkは単月黒字を目指す

 

また、ソフトバンクは社会に新しい価値を提供すべく新規事業にも取り組んでいる。

昨年はPayPayに集中投資を行い、AI配車プラットフォームのDiDi、コワーキングスペースのWeWork、MaaSのMONET等にも投資を行った。さらに、成長市場を見極めて、デジタルマーケティング、AI地図サービス、AI画像認証等へ参入した。

PayPayは、2020年4月末時点で利用者が2800万人を突破。決済回数は1年前に比べて17倍となり3億7,500万回となった。加盟店は全国200万店を突破した。「利用されている実感が一気に増してきた」と宮内氏は胸を張った。PayPayは今後、金融サービスに本格参入。そのテストマーケティングとして「あと払い」サービスを実施している。チャージ不要でお買い物ができ、翌月にまとめて支払いができるもので、「これがPayPayをさらに大きくしていく。収益化につながっていく大きなビジネスである」と自信を見せた。PayPayは金融サービスを強化し、公共料金や税金の支払い、オンライン/O2O、P2P/ソーシャルを強化し、「スーパーアプリを目指す」とした。

DiDiは、サービス提供エリアが25都府県に増え、契約タクシー会社は1年間で11倍の563社になった。配車回数も年間で8倍となった。ただし外出自粛以降、減少傾向となったが、タクシー業界平均の売上減が約30%に対して、6%ダウンの微減でとどまっているとした。

WeWorkは、メンバー数が年間で1.8倍の22,000名に増え、オフィスは稼働率の高い東京エリア(80%以上)に集中した。特に、今回の新型コロナウイルスの影響で働き方改革は新時代に突入するため、「新型コロナでチャーンレート(解約率)が上がると見ていたが、4月は予想よりも低かった」「オフィスを分散化したい。センターオフィスを縮小したいというニーズも増えている」とし4月は多くの席が販売された。さらに、2020年中に単月黒字化を目指すとした。

OYO Hotelは、成長戦略を再構築することになった。12月までは拡大を全面に展開してきたが、4Qは今のホテル数を維持しながら、地域に根ざした活動へと転換していった。3月時点の状況は国内ホテルの平均稼働率32%に対して、OYO Hotelは51%と業界平均を上回ることができた。また新型コロナに関する支援として、医療従事者に宿泊施設を無料提供する等の施策を行なった。

これらさまざまな事業によって純利益は過去最高益となる4,731億円を達成した。

 

2020年度業績予測

 

2020年度の経営方針としては、「通信事業では、スマホ契約数の拡大、5Gの積極展開、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進。ヤフーは、eコマースの拡大、金融事業の拡大、LINEとの経営統合。新領域は、PayPayやDiDiなど拡大事業の収益化新規事業の創出」「同時に、全社横断で徹底したコスト効率化を追求していく」ことを強調した。

ただし、新型コロナウイルスの影響として、ソフトバンクショップの来店者数の減少、ヤフーの広告出稿でマイナス影響を受けるとし、在宅勤務やテレワーク需要によるデータ容量の増加、eコマースで補うとした。

そして最後に今年度の予測として、「売上で4兆9,000億円、営業利益は9,200億円、当期純利益は4,850億円、年間は1円増配の年間86円にする」として話を締めた。

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