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2021年1月6日

人気のスペース Nagatacho GRiD が早期に黒字化を達成した理由とは

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株式会社ガイアックスが運営するイベントスペース「Nagatacho GRiD」。”ON THE GRiD OFF THE GRiD つながろう、自由になろう。”をテーマに2017年、事業をスタートした。その後、わずか2年で継続して黒字化を達成できるようになったという。その裏には、Nagatacho GRiDの責任者 野口佳絵氏(写真)のリーダーシップとIT導入がある。その背景について、話をお伺いした。

 

物件との出会いからスペースレンタル事業「Nagatacho GRiD」をスタート

株式会社ガイアックス 野口佳絵氏

BizMICE編集部Nagatacho GRiDというスペースレンタル事業を立ち上げた経緯を教えていただけますか。

●ガイアックス 野口佳絵氏(以下、野口氏):もともと当社(ガイアックス)は五反田にオフィスを構えており、2016年に本社移転の計画がスタートし、新オフィスを探すことになりました。

当社はシェアリングエコノミーや働きやすい環境整備を事業の軸にしていることから、倉庫や廃校をリノベーションしてオフィスにしている他企業の事例を参考にしました。テナントとしてビルのワンフロアを借りるよりも「共存の場」を生み出したいと思ってビルを探したのです。さらに、送迎バスの運行のしやすさ、社食のための食材を運送する際の利便性、昼夜問わずに人通りが多いなどの条件もあったため、さまざまな物件を見たのですがなかなかピンとこなくて。そんな時に東京・永田町の物件を見つけ、シェアリングエコノミーを推進する企業として、政、官と民をつなげる永田町という土地柄と、全フロア貸切で利用できることに魅力を感じました。ただ、五反田のビルのワンフロアと永田町のビル全フロアでは、オフィス賃料が比べ物になりません。

そこで、空間をシェアして私たちガイアックスが他の入居企業と共存させてもらうことで、お互いにWin-Winの関係が構築できるのではないかと感じて、本格的なスペース事業を立ち上げました。スペース事業に関するノウハウはなかったため、メンバーシップ制ワークスペースを運営している「みどり荘」にご協力いただき、スペース事業の設計を進めていきました。ちなみに、「みどり荘」は現在5階に入居してくださっております。

 

BizMICE編集部:最初はスペース事業を始めるつもりではなく会社のコンセプトや物件との出会いなどの経緯があって、スペース事業にたどり着いたのですね。

●野口氏:そうです。ただ、もともと社内外のシナジーが生まれる場所を作りたいという構想はありましたね。ここまで本格的に行う予定はありませんでしたが…(笑)

BizMICE編集部:Nagatacho GRiDは、どういったコンセプトですか?

●野口氏:Nagatacho GRiDのコンセプトは、ガイアックスのコンセプトを具現化した空間として「起業家が集まる場所」「社会課題を話し合う場所」「官と民がつながる場所」としました。そのコンセプトに共感していただける企業やフリーランスの方にのみ入居していただいています。

「誰でも利用可能ですよ、どんな用途でも使ってください」というスペースのほうが多くの方にアプローチできるのでしょうけど、当社としては応援したい企業やビジネスパーソンに使ってもらいたいという気持ちが強くありますね。

 

広告宣伝よりも仕掛け作りで認知度をアップ

株式会社ガイアックス 野口佳絵氏

BizMICE編集部:ターゲットを絞っているのですね。ターゲットにアピールするために、どのような宣伝や広告を展開したのですか?

●野口氏:実は、宣伝や広告はあまりしていません。その変わりに注力したのが、仕掛け作りです。

たとえば、スペースやサービスのクオリティを上げることで、スペース利用者が「Nagatacho GRiDにいる」とTwitterやFacebookでつぶやいたり、チェックインしてくれたりする。

また、利用してほしい団体のイベントに対しては当社から協賛することで、イベントへの集客にも協力して、この場所へ来てくれる人の母数自体を増やす。

2階のコワーキングスペースを無料開放して風通しを良くし、この場所の価値を理解してもらい、「ここで働きたい」と思ってもらう。

イベント参加者が、イベント前後にこのコワーキングスペースなどを利用して仕事ができるという使い方を訴求する。

ガイアックス社内の研修を、社外の方でも受講できるように一般公開する。

このような一見すると些細なことでもコツコツと積み重ねてきたことで、現在ではスペース利用者が自発的にNagatacho GRiDを推奨してくれるようになりました。シェアオフィスの方も、保証金なしで入居可能にしました。そうすることで、当社のコンセプトにマッチしたスタートアップが入居してくれるようになり、非常に喜ばしい限りです。

入居企業の社員が増えれば退去するケースが多くなりますが、幸いなことに他のスタートアップを紹介してくれ、継続してスタートアップ支援が可能となっています。また、入居企業とはパーティーやイベントを通じた情報交換やコミュニケーションでニーズを聞き出し、それを実際にスペースやサービスに反映させるため、入居企業の満足度を上げながら、より使いやすいスペースにブラッシュアップしていっています。

 

BizMICE編集部:時代の流れを読んで、最小限のリソースで稼働率アップにつなげているのですね。実際の利用者企業の声はいかがですか。

●野口氏:イベントで利用してくださった主催者からは「自由度が高いスペース」と評価していただいています。ホテルなどのバンケットだとスタッフが徹底して会場作りをしてくれますが、当社はそこまでのサービスは行わず、主催者自身に任せている部分が多いです。

当社からのサービスを過剰にしすぎないことで、主催者の理想に近いイベントを自分たちで作り上げることができるのだと思っています。当社が関わりすぎないことにより、当社のリソースも減らすことができているので、現在は黒字化運営ができているんですよ。

 

BizMICE編集部:割り切ることで黒字化運営が実現しているのですね。

●野口氏:そうですね、このスペースでたくさんの利益を求めているわけでもないですが。ただ、この段階に至るまでには立ち上げから2年半ほどはかかりました。単月黒字はすぐに達成できたのですが、運営が軌道に乗ってくると同時にトラブルなども増えてしまって。

たとえば「プロジェクターが起動しないからイベント開始時間に間に合わない」「LANが切れているがどうしたらいいんだ」などのPA機器周りのトラブルはとても多く、当初は7:00~23:00の営業時間だったのを9:00からに変更してスタッフが対応しやすいように軌道修正しました。

またスペースを管理する予約システムは特になく、スタッフは煩雑な予約業務に時間を取られていました。そこでMICE Platformのバンケットの予約業務に特化したクラウド予約システム「MICE Support Cloud」を導入しました。この導入効果が非常に大きく黒字化を早めてくれた大きなポイントですね。

IT導入でスタッフの仕事の質が変わり、顧客満足度が向上

 

BizMICE編集部:当社の予約システムを導入した経緯と効果を教えていただけますか。

●野口氏:従来、アナログで予約を管理していた際、予約システムを導入したいと思い、さまざまなシステムを探しました。しかし、どのシステムも決め手に掛け、そんな時に、ソフトバンクのグループ会社であるMICE Platform社の予約システムを知りました。ソフトバンクのグループ会社ということで安心感もあり、目から鱗でしたね。実際に、導入にあたりさまざまな要望をきいていただき、サポート体制も万全で、非常に助かっています。逆にこんな事までお願いして良いのかなと遠慮することもありますね。

導入効果もおかげさまで非常に出ています。たとえば、今までは外注として秘書代行サービスを使っていました。メールでの問い合わせに対してメールで返信する仕組みです。その問い合わせのほとんどが「○月○日は空いていますか?」という内容だったので、いちいち在庫を確認して返信するという手間も時間もかかっていました。しかし現在は、利用者がネット上の在庫カレンダーを自分で確認して空き状況を見ることができるようになり、問い合わせの件数もグンと減りました。一方で問い合わせしてくる方は確実に予約をする方だということが分かっているので、問い合わせ内容の質も上がりました

秘書代行サービスが不要になったのでその分の予算も削ることができました。また、スタッフの仕事の質が明らかに変わっているのは感じていますね。

今までスペースの空き状況の管理はGoogleカレンダーを使っていたのですが、やはり人の手による作業だとミスが発生しやすい。また、問い合わせ対応や請求業務などの手間がかかる業務はスタッフのモチベーションも上がりませんでした。

しかし、システムを導入したことでそのような手間やミスがなくなり、スタッフの精神的な負担を減らせたと思います。在庫管理もGoogleカレンダーだけだとダブルブッキングのリスクがあり、これが発生するかもしれないという環境では、スタッフも安心して仕事に打ち込めないですからね。ここは本当に助かっています。

さらに本来やらなければいけなかったけれど、中々注力できなかった業務を優先させられるようになりました。具体的には、会場のメンテナンス、利用マニュアルの整備など、ホスピタリティ面やリピート顧客の維持、新規開拓ですね。スタッフの仕事の質が変わったことで、お客さまの満足度も上がっていることは実感しています。

 

BizMICE編集部:問い合わせ件数が減ること自体に不安はなかったのですか。

●野口氏:量よりも質だと思っているので、件数が減ること自体は全く不安視はしていませんでしたね。

むしろ、現在は利用者とのやり取りのリレー回数を最小限に抑えることをKPIにしているくらいです。たとえば、利用者からの問い合わせ内容がマニュアルに記載されている内容だったら、マニュアルのURLを添付してご自身で確認していただくなど。スタッフのリソースも減らすことができているため、作業効率が上がっていますね。

 

BizMICE編集部:一方で、MICE Support Cloudに対して「もう少しこうしてほしい」などの要望はありますか。

●野口氏:UIはもっと使いやすく、見やすくしてほしいと思っていますね。

改修中ということで楽しみにしています。また、リピーターを大事にしていきたいので、利用したお客さまにキャンペーンを配信したり、メルマガで情報を提供したりする機能も期待しています。

 

BizMICE編集部:現在、メール配信機能や、開封率やクリック率の分析機能など、MAツールのような要素も実装している最中なのでご期待に応えられると思います。最後に、今後のビジョンを教えていただけますか。

●野口氏:引き続き、起業家や地方を応援する場所でありたいとは思っています。Nagatacho GRiDに来れば、組織や役職に関係なくフラットにコミュニケーションを取れるので、会社や組織というくくりがシームレスになり、出会いや学びがあります。「Nagatacho GRiDに行けば何か学びがあるのではないか」と思ってもらえる仕掛けをすることで、より多くの方が集まってビジネスやアイデアが生まれる場所になっていきたいですね。

BizMICE編集部:本日は貴重なお時間をありがとうございました。

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TEL:03-6889-2807

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