2017年12月5、6日、ライブクリエイト社主催『World Business Growth Strategy 2017』がベルサール高田馬場で開催された。初日の5日には、お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣氏が登壇。来場者2000名を前に自身で発行した書籍『革命のファンファーレ』をもとに同氏の大ヒット絵本『えんとつ町のプペル』の売れるための仕組み作り(マーケティング戦略)を語り、多くの聴衆を魅了した。今回、その講演内容をレポートする。
アジェンダ
- なぜ、たけし、さんま、ダウンタウンに勝てないのか?
- 絵本業界を分析、考え出した差別化戦略とは?
- モノを買う買わないの消費者インサイトは?
- クラウドファンディングによる資金調達
- 『えんとつ町のプペル』のオープン戦略
なぜ、たけし、さんま、ダウンタウンに勝てないのか?
「ディズニー映画に勝ちます!」という大胆な宣言から講演はスタート、大ヒット絵本『えんとつ町のプペル』の映画化でディズニー映画に勝つとした。それは単なる宣言では終わらない。ディズニーに勝つためのリサーチを行った。「ディズニー映画はめっちゃ強い。観客動員数は半端ない」とそのパワーを思い知った。同時に弱点も発見する。ディズニー映画と一口に言ってもジャンルはさまざま。「ディズニー映画の中でも、ジャングル系は弱め!そのタイミングでぶつけていく!」と勝ち筋を明かし、場内の空気を一気に惹き込んだ。
西野氏は、キングコングとしてデビューしてすぐに売れ始めた。代表番組「はねるのトびら」(フジテレビ系列)は視聴率20%超えを連発。他にもレギュラー番組を多数持ち、テレビでキングコングを見ない日はないぐらい露出が多かった。
飛ぶ鳥を落とす勢いの中、ふと西野氏は考えた。「これだけテレビに出演しているけど、自分は全然スターになってない」と。上を見れば、たけしさん、さんまさん、ダウンタウンさん等、スターはたくさんいる。「なぜ、なのか?」自問自答を繰り返した。出した結論は、「今走っているレールは、先輩方がひいたもの」「このレールで走っている限り、先輩には勝てない」。「勝とうと思ったら芸能界ではダメ、自分で新たなレールをひかなければ」と考え、その後、テレビ出演を一切やめた。
勢いよくやめたものの、その後、何をするかは決めてなかった。そんな時、タモリさんから「絵本を書けば?」とアドバイスいただいた。西野氏は即決した。「絵本を書こう。ただし、世界中の絵本作家に勝てないようであれば出さない」。
絵本業界を分析、考え出した差別化戦略とは?
その日から新たな戦いがスタートした。まず、絵本業界で、勝つために何をすべきか?を考えた。ここで芸能界での件を思い出す。「勝つためには競争してはダメ」。世界中の絵本作家と競わないジャンル、そして自分が勝てるところを徹底的に探した。勝負はほぼ全滅だったが、一つだけ勝機を見出した。
“自分は絵本作りに時間をかけられる”
そもそも絵本は部数がたくさん出るジャンルではない。6000部売れて御の字の世界。それだけ売れても絵本作家に入ってくる収入は限られる。そのため、絵本作家は発行サイクルを短くし、たくさんの絵本を出し続けなければいけない。薄利多売の業界構造だ。
それに比べ西野氏は時間に余裕があった。1作につき3~4年かけて絵本を作ろうと決断した。後は、時間をかけて作った絵本の方が良いというブランディングをしていくことで売れるだろうと仮説を立てた。
一作目は5年の歳月をかけて完成。デビュー作『Dr.インクの星空キネマ』は3万部の売れ行きだった。その後、2作目も出し、販売部数は1作目同様、約3万部。絵本は1つの作品で6000部売れたら成功。だが西野氏はこの3万部という数字に納得いかなかった。
なぜ、3万部しか売れないのか。再び自問自答を繰り返す。
ここで一つの結論にたどりつく。「これまでは、絵本を売るための導線をつくってなかった。販売することに積極的じゃなかったのではないか」「これでは育児放棄と同じ」と考えた西野氏は、今後、売るための導線も考え作ったものは必ずメガヒットさせると決意した。
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モノを買う買わないの消費者インサイト
では、売れる仕組みをどう作ればよいのか?
西野氏は、まず、モノを買う側の立場で考えた。自分はここ最近、何を買ったのかを洗い出した。「本は買わない、CDも買わない。ましてや有田焼も買わない」「作品系のモノも買わない」。一方、「パンは買う、テレビは買った」「生活に必要なモノは買う」。ここでひとつの結論を出す。生活必需品かどうかが、買う買わないの一つのボーダーラインだなと。
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