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2018年4月5日

グロースハック対談!ドミノ・ピザ、良品計画、Peach Aviation

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2018年1月24日、東京・南青山の宣伝会議セミナールームで『ユーザー視点で優れた顧客体験を実現する~ビジネス成果に直結するグロースハック実践セミナー』が開催された。第2部ではパネルディスカッションが行われ、ドミノ・ピザジャパン 執行役員 富永氏、良品計画 WEB事業部長 川名氏、Peach Aviation 千歳氏が登壇した。その模様をお届けする。

 アジェンダ

  • 良品計画のグロースハックは、店舗での体験がカギ
  • LCCは飛行機代以外の収益(アンシラリー)をグロースハック
  • 消費者理解は、人間を学び共通性を理解すること
  • グロースハックには、観察、MVPの概念、バイキングのマインドセットが重要

 

良品計画のグロースハックは、店舗での体験がカギ

 

Q まずは各位の業務内容や自己紹介をお願いします。

川名氏(良品計画)

現在の私のミッションは2つある。1つはECの最大化。2つ目は、ユーザーとデジタルでの接点が増えていく中で、無印良品を知っていただき、理解していただくこと。その結果として店舗に、ネットストアにご来店いただくことだ。無印良品は店舗が一番の体験の場になるので、後者がより重要なミッションとなる。

 

千歳氏(Peach Aviation)

PeachはLCC。LCCは飛行機(航空券収入)以外のところでいかに売上を上げられるかが重要になってきている。それをアンシラリーというが、それにはお客さまを理解して、その理解に基づいて最適なサービスを提案していく、この仕組みづくりを行っている。

 

富永氏(ドミノ・ピザジャパン)

大学卒業後、コダック、コカ・コーラ、西友など7社でマーケティングを担当してきた。そのうち3社でCMOを拝命。インパクトを出すことに命をかけている。現在は、ドミノ・ピザでCMOをつとめている。

 

LCCは飛行機代以外の収益(アンシラリー)をグロースハック

 

Q 顧客体験の向上に向けた取り組み事例について教えていただけますか?

川名氏(良品計画)

2008年ぐらいから、顧客はスマホでオンラインと、オフラインを行ったり来たりするようになった。無印良品は、店舗が一番の体験の場で、そこでの体験がブランド全体に響いてくる。顧客にはECサイト、店舗で商品を購入していただくが、購買行動をきちんと把握し、最適なマーケティングコミュニケーションをとることが重要だ。さらに現在は、アプリの会員証である「MUJI passport」を発行している。顧客と長いお付き合いをしていく中で、なぜ無印の商品を買ってくれたのか、購買後の不満はなかったか等を把握し、改善や新商品に活かす、このループをまわしていくことで顧客体験を向上していく。

お客さま接点
お客さま接点

千歳氏(Peach Aviation)

冒頭に話したが、LCCは飛行機代以外の収益(アンシラリー)が重要になる。その例は、荷物預かり、シートのアップグレード、機内食、ホテル予約等。LCCは航空券代を極限まで下げている分、ここで収益を上げることが必須になる。その比率は、グローバルで見るとフルサービスのエアラインで10%台(日本の大手二社は数%)だが、LCCでは20%から40%を超えるところも出てきている。飛行機は、供給量の柔軟性が乏しいので、供給座席数、運航便数、過去の利用状況などから、ある程度収益は想定しやすい事業モデル。航空券収入では、いかに見込み客をとりこぼさないかが重要となり、この戦略は航空券の販売サイトの改善等で行う。一方、アンシラリー市場は年平均23%ずつ拡大している。ここはエアラインの枠を飛び越えて色々と試していくことが求められる。

 

富永氏(ドミノ・ピザジャパン)

グロースハックは破壊的な成長ということで、2016年のクリスマスの話をしたい。2016年はクリスマスに向けて、いろいろ凝ったマーケティングを行った。結果、非常に多くのお客さまに来ていただいた。売上はこれまでのデイリーのセールスレコードを40%も上回る記録を達成。一方でその数が予想以上だったため、待ち時間が4、5時間以上になりオペレーション上の課題を残した。SNSを見ると散々なコメントが多かった。

2017年はその反省を踏まえ、オペレーションを改善。メニューがたくさんあるとお客さまの選ぶ時間がかかるので2種類に絞った。それから「2016年はご迷惑をおかけしました。2017年はもうしません」というコミュニケーションも行った。結果、平均待ち時間は20分でオペレーションもうまくいった。でも売上は前年比で5%しか伸びなかった。ちょっと物足りない。原因を分析したところ、WEBのトラフィックは2016年に比べ30%ぐらい伸びていたが、CVRは半分以下になっていた。メニューを2種類に絞り切ってしまったこと、もう半分はカスタマージャーニーが不十分だったがあげられる。

 

クリスマスのグロースハック

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消費者理解は、人間を学び共通性を理解すること

 

Q マーケティングの仕事を長くしていると消費者視点を持ちづらくなるという課題をよく耳にする。皆様は、どうやって消費者視点を持つように努力されているか?

 

川名氏(良品計画)

私というより会社がどうしているかを紹介したい。無印良品は1980年、西友のプライベートブランドとして生まれたが、その4年前、西友はモニターテストをもとに缶詰を開発していた。ある日、モニターテストに参加していた主婦が「生のマッシュルームは丸いのに、なぜ缶詰には丸い部分がないのか?」と指摘した。製造現場では、マッシュルームを缶詰にする際、端から順に切っていき、端の部分は見栄えが悪いので使えないと考えていた。でも、お客様からしてみたら、味は同じだし捨てるのはもったいないとなる。このお客様の一言からいまの『ランダムスライスマッシュルーム缶詰』が生まれ、端もちゃんと入っている。このことから無印良品としては、お客様と会話すること、お客様視点に立つことが重要だと認識している。

このようにセゾングループ代表の堤清二さんは、資本の論理ではなく、人間の論理で行動するブランドとして無印良品を創られた。そういうところから会社のカルチャーは顧客視点になっていると思う。

 

千歳氏(Peach Aviation)

3つある。まずは身銭を切ることを重視する。会社にいるとだいたい会社のお金で何でも買えてしまう。でも、身銭を切らないと、この商品のこの価格はどうなのかという体感がわからない。その辺の感覚がにぶらないように身銭をきることを心掛けている。

2つ目は、毎年初体験。人間、年を取ると感性が鈍ってくる。初心者になることで人間は謙虚になる。そして経験者の声に耳を傾けられる。

3つ目は、わかったふりをしない。これだけ消費が多様化すると一人で全部を理解するのは無理。そこは割り切りが必要だと思っている。わからなくても良いので知るということが重要だ。この3つで価値観がなるべく柔軟になるように心掛けている。

 

富永氏(ドミノ・ピザジャパン)

「鏡はうそをつく」という言葉が好きだ。これは鏡を見て、自分はかわいいと思うのは錯覚ということ。それは鏡用に自分を作っているから。これと同じ様なことが会社にもいえる。会社が好きになると、消費者よりも2割増しで自社商品が良く見えてしまう。これは要注意だ。

また、消費者を理解するにあたり、昔と今の若者は違うとか、男性と女性は違うとか違いではなく、人間を学び共通性を考えるようにしている。人間の反応系そのものをきちんと理解することが重要だ。

 

グロースハックには、観察、MVPの概念、バイキングのマインドセットが重要

 

Q 今回のテーマにもあるグロースハック。この言葉にどんなイメージを持たれているのかを教えてもらいたい

川名氏(良品計画)

グロースハックには、データも観察もどっちも大事。ケースによってどちらからアプローチしても良い。一方、自分がよく会長に怒られるのは、観察ではなく、データからプレゼンをした場合で、会長からよく「自分にマーケティングしたのか!」と言われる。自分ごととして、お客様視点で観察から課題抽出する姿勢が必要となる。それがあるとリズムよくスケールしていくのではないか

 

千歳氏(Peach Aviation)

図を見て頂くと、左が一般的なPDCA。グロースハック的に動くのは右側になる。この中では、特にアイデアに対する組織の度量が試される。アイデアに対して「それ何?」といったアプローチではなく、ビジネスとして可能性があるなら仮説を検証していくべきだ。

次にグロースハックにはMVP(Minimum Viable Product)の概念が重要になる。たとえばチームでバットマンのキャラクターグッズを作ろうという話が出たとする。このお題に対して、ひとそれぞれ思い入れが違う。そこで共通する部分を見つけ出しMVPとしてスタートラインを切らなければいけない。ここにズレがあると後々失敗する。共通部分は、お客様の基本的ニーズを満たしていることと、成長、スケールできるかが判断基準になる。

グロースハックについて

富永氏(ドミノ・ピザジャパン)

グロースハックには2点の重要な点があると考える。まずはマインドセット。これを農民とバイキングに例えて説明したい。農民は、種をまき計画通りに収穫し収益を上げていく。将来を予測しやすい。一方、バイキングは一人でも多くの人から物を奪おうとする。どう奪えばいいのかを徹底的に考える。バイキングは悪者だが、バイキングのマインドセットを持つことがグロースハックには求められるのではないか。

2つ目は、企業がやることなので、戦略の中で折り合いをつけなければならない。では、そもそも戦略とは何かというと、演繹と創発がある。前者は、最初に市場分析して、問題点を洗い出し課題を定義、戦略を立てるというロジカルな進め方だ。もう一つの創発は現場主義、改善主義。現場にあるリソースを最適に組合せ、その場で最大のパフォーマンスがあげられるようにすることである。グロースハックは、創発が21世紀の形になったものだと考える。

 

Q ありがとうございます。では、最後に今後のユーザー体験について教えていただけますか

川名氏(良品計画)

無印の体験は、店舗体験が最も重要で、次いで商品体験、それでのライフ体験となる。オンラインは、売り場に行く前のファーストコンタクトであり、さらにアフターでお客さまの声を聞くためのコミュニティとなる。タッチポイントは、いろいろとあるが最終的には店舗体験を強化していきたい。

 

千歳氏(Peach Aviation)

Peachは、“Share Happiness”を重視している。今度、大阪から新潟に就航する。なぜ新潟か、東京-新潟間は新幹線が通っているが、大阪まではバスで5時間ぐらいかかる。飛行機で1時間少々、片道4130円~という低価格で行けるのではあればまだまだチャンスはある。日本にはそういった機会がたくさん埋もれている。そこにいる人がもっといろいろな所に行けるといいよねという価値観でPeachは動いている。

飛行機に乗る時間は旅行者にとって大事な時間。そこでの経験が次の旅行にもつながる。そこで、タッチポイントを増やして顧客とコミュニケーションを取っていく。Peachは大部分が個人客。スーツで乗ると浮くぐらい機内がすごく明るい。一人ひとりのお客様が経験されたストーリーをきちんと聞かせてもらい、それをきっかけにサービスの輪をリアルとオンラインを融合して拡げていく。

 

富永氏(ドミノ・ピザジャパン)

店舗の最適化が重要。店舗は演繹的なコミュニケーション戦略の最重要タッチポイントであり他メディアとの整合をとるのが原則である。一方、各店には店長がいるが、店長の発想によっては本部が考えるプロモーションより大きりリターンが得られるケースもある。このバランスが会社にとっては重要だ。またデリバリーピザはデリバリー中心だったので店舗も大通りから一歩入った裏にあり、店前には配達用のバイクが置いてある状態だった。スタッフが顧客と接するのは電話注文時と配達時だけだ。最近はビジネスモデルを変えて表通りに店舗を構え、お客様を店舗に迎えるようになった。今まで接客をしたことがないスタッフの行動を変える必要がある。つまりそのときどきの会社の戦略によってマインドセットを変える必要がある。

本日は貴重なお話をありがとうございました。(BizMICE編集部)

 

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