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2017年12月10日

「迷った時ほど遠くを見よ」ソフトバンクグループ 孫正義社長の決断

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「迷った時ほど遠くを見よ」「そうすれば自ずと取るべき行動が見えてくる」。2018年3月期、中間決算発表の冒頭、ソフトバンクグループの孫正義社長はこう切り出した。米スプリントとTモバイルの合併交渉で、「ここ数か月間ずっと悩んだり、迷っていた」と続ける。米モバイル通信市場は2強2弱の構造。1位の米ベライゾン・コミュニケーションズと2位 米AT&T 2社合計の加入者シェアは約70%を占める。3位Tモバイル、4位米スプリントとの差は大きい。孫社長は、上位2社と対等に戦うには米スプリントとTモバイルの合併が欠かせないと考えており、その実現は目の前にあった。孫社長の決断ひとつで交渉が合意に達するのだ。(決算発表会場:ロイヤルパークホテル)

 

アジェンダ

  • 孫社長の頭には常に複数の戦略オプションがある
  • 大きな挑戦に必要なもの

孫社長の頭には常に複数の戦略オプションがある

 

その決断は、同時に合併後、新会社の経営権を握られることを意味する。Tモバイルの親会社ドイツテレコムは、合併後の新会社の経営権を単独で握りたいとしたからだ。これが孫社長を悩まし続けた。

その10日ほど前、ソフトバンクグループの取締役会には、孫正義社長はじめ、代表取締役副社長 宮内謙氏、ロナルド・フィッシャー氏、アリババ会長 ジャック・マー氏、マルセロ・クラウレ氏、ファーストリテイリングの柳井正氏等、そうそうたるメンバーが出席していた。その取締役会で、「ソフトバンクグループにとって、米国は戦略的に重要な拠点なのか。スプリントも戦略的に重要か。それとも単なる投資アセットなのか」と意見が出た。もし戦略的な拠点、会社であれば、「合併会社の経営権を手放すべきではない」との結論でまとまった。

孫社長は、「心の底から晴れやかな気持ちである」とドイツテレコムCEO ティム氏に合併交渉中止の旨を申し入れた時を振り返りながら答えた。

孫社長の頭には、常に複数の戦略オプションがある。ひとつがダメでも、次の手を即座に打つことができる。スプリントとTモバイルの合併中止で、孫社長はソフトバンクグループ各社とスプリントとのシナジーを描く戦略に切り替えた。

そして冒頭の言葉に繋がる。5年後、10年後、世界はどう変わっているか。

IoTがモノ同士をつなげ1兆個のチップが市場にあふれる。この1兆個のチップが世界にばらまかれ、米国は最もその数が多くなる。人と人をつなぐ通信は、ベライゾンやAT&Tが先を行ってる。この土俵で2社を抜くのは簡単ではない。しかし、IoTという土俵でみると景色が変わる。ソフトバンクグループには半導体のCPU設計に特化する英ARMがあるからだ。このARMがある故に、IoT時代の今後は俄然有利な立場になる可能性が高いとした。通信は今後、「人と人ではなく、人とモノ、モノとモノが繋がる時代になっていく」「そのインフラのことを考えるとスプリントは確実に重要な資産だ」(孫社長)と語る。

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ソフトバンクグループ 2018年3月期中間決算発表会 孫正義社長
ソフトバンクグループ 2018年3月期中間決算発表会 孫正義社長がプレゼン

 

大きな挑戦に必要なもの

 

ARMを持つ優位性に続き、さらなる強みを続けた。人とモノ、モノとモノがつながるIoT時代、インターネットは家庭や自動車の屋根等にもつながっていく。しかもそれは超高速で、どこにいても、どんなに山間部でもつながる必要がある。それには従来のような地上からの基地局だけでは足りず、宇宙から電波を飛ばすことで効率的になるとされる。ソフトバンクグループには、 米OneWeb(ワンウェブ)という通信衛星業界で最速レベルのスピード、パフォーマンス、低遅延という特徴を持つ衛星通信会社がある。このOneWeb(ワンウェブ)により宇宙空間からつなげる光ファイバーレベルの通信網を構築できるのだ。その恩恵を最も受ける国が米国とした。

「OneWeb、ARMとスプリント。この3社で従来とはまったく異なる価値、他社がマネできない価値を提供し顧客を一気に増やしていく」と孫社長は強調した。

シナジー戦略はOneWeb、ARMだけではない。「ソフトバンクには、ソフトバンクビジョンファンド(SVF)という大変強力な新しい構えができた」(孫社長)とも語る。このSVFで、ユニコーンへ投資し、戦略的なシナジー集団をつくる。そして、このほとんどの会社が無線の通信を使い、スプリントとのシナジーが活きるとした。

スプリントの経営権を維持することで、グループシナジーを活かし全体の利益を最大化できるとした。

そのスプリントの足元の業績は回復している。コスト削減効果が効き、上期の営業利益は18億ドルを達成。純利益は2億ドルとなりソフトバンクが買収後、初の黒字となった。ネットワークインフラにも投資し、接続率は上がってきている。「経費を減らしながら、ユーザーを獲得することは決して楽ではない」(孫社長)としながらも回復基調に自信を深めた。

最後に場内から、Tモバイルとの合併交渉で、経営権を持たなくても一定の株を保有することで影響力の確保や、IoT時代のインフラとして活用することも可能だったのではないか?との質問が出た。

「せめて同等の経営権なら良かったが、経営権が取れないと大きなことができない」と孫社長は答え始めた。ソフトバンクの歴史を振り返るとヤフーBBのスタート、ボーダフォン(日本法人)やスプリントの買収等、大きな勝負に何度も挑んできた。「腹をくくった大きな勝負は、話し合いや多数決で決めるものではない」「やや強引に自分で決めた」「それにはリーダーの強い思いや決断が重要」「その決断に経営権は必要だ」と強調した。(BizMICE編集部)

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